私は‪‪✕‬‪✕‬を知らないⅢ【毎週水曜更新中】

朝食のパンを食べてわたし達の住むアパートを出る。


抜けてるところもある階段だし、隙間風で冬は寒いけど二人の家が大好きだった。


お母様はお仕事のある日はこうして大きな上着を被せて抱きかかえた状態で知人の元まで送ってくれる。


わたしの家は血筋や仕来りに厳しいお家なんだってお母様は言ってた。


それでわたしとお母様はここで住むことになったけど、危ない人がいーっぱい居るから狙われないように隠れないとって。


だから家のカーテンは開けたことはないし、わたし一人で外に出たこともなかった。


来年からショウガッコウっていう所に通わないといけない、みたいなことも聞いたけどお母様は行かなくていいって言ってくれた。


ずっと、ずっと、二人でいようって。


わたしはそれが嬉しかったし、すぐに頷いた。


それでもこうして知人の元へ行くのはお母様の働く場所が遠くにあるから。


こんな危ない所ではいい仕事がないんだって。


それは仕方ない。


分かってるからこそ自分に言い聞かせるけど、


(もう、行きたくないよ)


こうして抱っこされる度に、お母様の体温に包まれる嬉しさを覚えながらこれから起こることに怯えていた。