私は‪‪✕‬‪✕‬を知らないⅢ【毎週水曜更新中】

話す、といっても私達の関係性を表す言葉は見つからない。


友達でも、恋人でも、家族でもない。


ずっと傍にいてくれた片割れ。


もう一つの心臓、そんな感じだ。


そうなった理由を話すには、もっと昔の話から始めなきゃいけない。


母親という人間の元から逃げ出したあの頃の話を。








「ーーー」


優しく頭を撫でる感触に次第に目が覚める。


「なずな」


また、わたしじゃない誰かの名前をお母様が呼んでる。


「んっ・・・」


「おはよう、ましろ」


「おはよう、お母様」


「もう、ましろってば朝に弱いわね」


「えへへ、ごめんなさーい」


お母様はわたしを通して誰かを見てる。一番古い記憶の時点で気付いてはいたけれどあえて触れるような事はしなかった。


聞いたところで決して怒るような人でもないけれど、何故か嫌だった。


綺麗で優しい、そんなお母様が大好きだから少しでも幻滅されるような事はしたくなかったんだと思う。


今思えば察しのいい子供、それが私だった。


「また今日もお願いしてるから着替えておいで」


「・・・うん」


「一人で着替えられる?手伝おうか?」


「もう一人でできるもんっ!恥ずかしいからお母様は出て!」


「ふふ、はいはい」


たんすから長袖を引っ張り出してお母様を追い出すように扉を閉める。


(今日も行くんだ。・・・いやだなぁ)


あざだらけの腕を視界に入れながら急いで身支度を整えた。