私は‪‪✕‬‪✕‬を知らないⅢ【毎週水曜更新中】

「ひ、久しぶりっ」


やけくそ気味に言った挨拶はどこかイントネーションが可笑しかった。


それでもましろちゃんの目を見てしっかりと言えた。


言った傍から視線を外されたらどうしよう、出て行けって言われたらどうしよう、って嫌な考えが浮かぶ。


「久しぶり」


そんな心配とは裏腹にましろちゃんは、


声は小さかったけど、聞き慣れた優しい声で返してくれた。


ほんの少しだけ肩の力が抜ける。


だけど次の言葉は、その安心を簡単に打ち砕いた。


「・・・なんで来たの」


静かな声。


責めているようにも、怒っているようにも聞こえない。


それなのに胸の奥がきゅっと締め付けられる。


赤い瞳は文化祭の日と違って穏やかなはずなのに、どこか遠い。


あたし達が会いたかった時間。


心配していた時間。


寂しかった時間。


全部ましろちゃんには必要なかったのかな。


誰も言葉を見つけられない中、その沈黙を破ったのは朔夜くんだった。


「話を聞きに来た。言ったろ、話すって」


迷いのない声。


まっすぐにましろちゃんを見つめるその姿に、あたしは小さく息を呑む。


ましろちゃんは一度目を伏せ、それから諦めたように小さく息を吐いた。


「そうね、約束は果たさないと。知りたいのはきっと蓮達との関係性よね」


赤い瞳がゆっくりとあたし達を見渡す。


「来た本当の目的は何なのか知らないけど、聞いたうえで判断してくれて構わないから」





ぐちゃぐちゃな感情のまま語られたのは、





あたし達が知らないましろちゃんの過去───────。