私は‪‪✕‬‪✕‬を知らないⅢ【毎週水曜更新中】

鋭く、それでいて今にも泣き出しそうな声。今まで見てきた理事長からは想像もつかないものだった。


「幸せを望むことは間違いなんかじゃない!たったの16歳なのよ・・・? 人生はこれからなのっ。お願い、お願いだからっ────」


お願いだから、


その後に続く言葉は形にならなくて理事長の言葉の意味を理解することができない。


皆なら、薺さん達なら、分かるのかな。


膝から崩れて病室の布団を握りしめる理事長。


肩は震えてるけど、泣いてるのかはここからじゃ分からない。


そんな理事長を黙って見つめるましろちゃんも、俯いていて表情が見えない。


ましろちゃんはどんな顔をしているんだろうと、そればかりが頭に浮かんでいた。


「こほん。・・・・あー、もういいか?」


海斗さんの咳払いにそっと振り返る理事長。


「海斗・・・、貴方達も・・・。みっともないとこ見せたわね」


立ち上がって病室を去る姿はいつも通りにも見えたけど、涙を堪えているようにも見えた。


「まったく、手の掛かる嫁さんだね」


海斗さんと篠宮さんは理事長を追うように病室を後にした。


「薺さん」


「!」


あたしが呼ばれた訳じゃないのに二週間ぶりに聞くましろちゃんの声に反応してしまう。