私は‪‪✕‬‪✕‬を知らないⅢ【毎週水曜更新中】

不安は解消されないままバクバクとうるさい心臓と一緒にましろちゃんの病室へと向かう。


(確か花言葉は希望や前向きだって店員さんに教えてもらったな)


そんな花言葉に勇気を貰うようにお見舞い用に用意したガーベラの花束を崩れない程度にぎゅっと抱きしめる。


休日といっても一番早く面会できる時間に来たからなのか院内は静かで、聞こえるのは遠くの足音やナースステーションから漏れる声くらいだった。


一歩進む度に緊張が増していく。


皆も同じなのか、先程まで聞こえていた会話はいつの間にか途切れていた。


「・・・緊張するな」


ぽつりと零した文くんの言葉に誰も否定しない。


あたしも同じだったから。


薺さんが足を止める。


「ここだよ」


示された病室のプレートへ視線を向ける。


そこに書かれている綾波という文字を見ただけで胸が苦しくなった。


この先に、ましろちゃんは居るんだ。


薺さんがドアへ手を伸ばした、その時だった。





「そうやって傷つくことが当たり前だと思っている! 貴女達は大人の都合に巻き込まれた被害者でしかないのよ!? 」





聞き覚えのある女性の声に思わず足を止める。


そのまま開かれた先に見えた人物で確信する。


やっぱり、理事長だ。


「理事長、ましろさんは病人ですから」


「黙ってッ!」


止めに入る篠宮さんや皐月くんの声すら遮るほど、理事長の声は悲痛なものだった。