夜の風景

第四章・第十七ページ:横浜からの手紙


四月初め――東京・ミアの家


穏やかな朝だった。


白いカーテンの隙間から差し込む朝の光が、ミアの勉強机を静かに照らしていた。


ミアはまだ部屋着のまま、机の前に座っていた。


目の前には、一通の白い封筒が置かれている。


何日も待ち続けていた封筒だった。


ミアの手が、少し震えた。


ゆっくりと封を開ける。


そして、最初の一行に目を止めた。


「合格通知」


数秒間、何が書いてあるのか理解できなかった。


もう一度、手紙を読み返す。


合格していた。


ミアは静かに息を吐いた。


そして、顔に小さな笑みが浮かんだ。


ミア:

「……受かった。」


その声は、自分だけに聞こえればいいと思っているかのように小さかった。


廊下を通りかかった母が、その声を聞いて部屋に入ってくる。


母:

「どうしたの?」


ミアは手紙を持ち上げた。


ミア:

「大学、受かった。」


母は数秒間、手紙を見つめた。


そして笑顔になり、娘を優しく抱きしめた。


母:

「おめでとう、ミア。」


ミアは目を閉じた。


しばらく、その腕の中にいた。


横浜市の大学


ミアは進学先として、横浜市にある大学に合格した。


彼女が選んだのは、日本文学の分野だった。


幼い頃から、本を読むことが好きだった。


でも今度は、ただ本を読むだけではない。


なぜ、ある言葉が人を変えることができるのか。


なぜ、一つの詩が何年経っても誰かの心に残り続けるのか。


そして、なぜ、口にされなかった言葉でさえ、人の心を揺らすことがあるのか。


それを知りたかった。


ミアは古いノートを開いた。


そして、空白のページを一枚見つける。


そこに、ゆっくりと書いた。


「ここから始める。」


少しだけ手を止める。


そして、その下にもう一言書き足した。


「横浜。」


その日の夕方。


ミアは窓辺に立っていた。


窓の外では、東京がいつもの日常へと静かに戻っていく。


自分が育った街。


大切な友達と出会った街。


冬も、春も、そして――一人の特別な人との思い出も、すべてが詰まった街。


ミアはしばらく目を閉じた。


すると、アイロの姿が心の中に浮かんだ。


けれど、今度は何も言わなかった。


ただ、ほんの少しだけ微笑んだ。


ミア:

「私も、前に進まなきゃ。」


合格通知の入った封筒を、机の上にそっと置く。


もう、決めた。


ミアは東京を離れる。


逃げるためじゃない。


自分自身の人生を始めるために。


そして、その行き先は――


横浜だった。