夜の風景

第四章 – 第十六ページ:卒業の日


3月下旬 – 卒業の日


朝早くから、学校の校庭は生徒たちとその家族でいっぱいだった。


みんな、きちんとした服装に身を包んでいる。


あちこちから、笑い声や話し声が聞こえていた。


ミアは鏡の前に立ち、卒業式の服装を整えていた。


その後ろでは、母親が微笑んでいる。


母:


「とうとう、この日が来たね。」


ミアは鏡に映る自分を見つめた。


そして、微笑んだ。


「うん……私もまだ信じられない。」


母親は優しくミアの肩に触れた。


「あなたのことを、本当に誇りに思ってるよ。」


ミアは何も言わなかった。


ただ、その笑顔が少しだけ深くなった。


数時間後、卒業式が始まった。


生徒たちの名前が、一人ずつ呼ばれていく。


そして、ミアの名前が呼ばれた。


ミアは数歩前へ進んだ。


その瞬間――


周りの音が、遠くなったように感じた。


ただ、目の前のステージだけを見つめていた。


そして、卒業証書を受け取った。


その直後、友達たちの声が聞こえてきた。


ユカ:


「みや!おめでとう!」


ミアは笑いながら、彼女たちのほうを振り返った。


式が終わると、四人の友達は並んで立った。


ユカがスマートフォンを高く掲げる。


「写真撮ろう!これが、学生としての私たち四人の最後の写真になるんだから。」


ハナが笑った。


「最後?誰が最後だって決めたの?」


リナが言った。


「だって、もう今までみたいに毎日会えるわけじゃないから。」


ミアは三人を見つめた。


その目には、少しだけ涙が浮かんでいた。


けれど、今度は泣かなかった。


ミアは微笑んで言った。


「どこにいても、私たちはずっと友達だよ。」


四人は肩を並べて立った。


カメラがシャッターを切る。


カシャッ。


一つの瞬間が、写真の中に残った。


もう二度と、まったく同じ形では戻ってこない瞬間。


写真を撮り終えたあと、ミアは少しだけ友達から離れ、学校の校舎を見つめた。


最後に、もう一度。


優しい風が吹いた。


風が、ミアの髪をそっと揺らす。


ミアは静かに、心の中でつぶやいた。


「さようなら……学校の日々。」


そして振り返った。


今度は、一度も後ろを振り返ることなく、学校の門を出ていった。


一つの章が終わった。


そして――


ミアの新しい人生の章が、今、始まろうとしていた。


つづく……