夜の風景

第四章 – 第十三ページ:まだ残っていたマフラー


同じ夜 – ミアの家


雪は、静かに降り続いていた。


ミアは家に着くと、何も言わず、そのまま自分の部屋へ向かった。


ドアを閉める。


数秒間、ドアの前に立ったまま動かなかった。


そして、ゆっくりとベッドに腰を下ろした。


両手を膝の上に置き、ただ一点を見つめる。


泣かないように、必死にこらえていた。


けれど――


涙は静かに頬を伝っていった。


ミアは手の甲で涙を拭った。


そして、小さな声でつぶやいた。


「自分で決めたことなんだから……後悔しちゃいけない。」


しばらく沈黙した。


やがて、ミアの視線が窓へ向いた。


雪が窓ガラスに静かに積もっている。


ミアは立ち上がり、窓辺へ歩いていった。


外を見つめる。


数時間前、海辺で自分とアイロの間に降っていた雪と同じだった。


ミアは目を閉じた。


すると突然――


一つの記憶が、心の中によみがえった。



フラッシュバック – 去年の冬


あの日も、空気は冷たかった。


ミアは道端に立ち、寒さで赤くなった両手をこすり合わせていた。


そこへ、アイロが向こうから歩いてきた。


ミアに気づくと、彼は一瞬足を止めた。


アイロ:


「寒い?」


ミアはすぐに首を横に振った。


ミア:


「ううん……大丈夫。」


アイロは微笑んだ。


そして、寒さで赤くなったミアの手に目を向けた。


何も言わず、自分の青いマフラーを首から外す。


そして、そっとミアの首に巻いてあげた。


ミアは驚いたように彼を見つめた。


ミア:


「アイロ……これ、アイロのマフラーだよ。」


アイロは小さく笑った。


アイロ:


「君が使って。」


ミアはマフラーにそっと触れた。


暖かかった。


そしてその瞬間――


ミアの顔に、初めて穏やかな笑顔が浮かんだ。


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現在


ミアは目を開けた。


そして、首元に手を当てた。


けれど、そこにマフラーはなかった。


それを、アイロに渡したのだ。


かつてアイロが、自分の手でミアの首に巻いてくれた、あのマフラーを。


ミアは静かに窓辺に座った。


また一粒、涙が頬を伝った。


そして、とても小さな声でつぶやいた。


「きっと……いつまでも自分のものではいられないものも、あるんだね。」


外では、雪がさらに強くなっていた。


そして――


この家から遠く離れた場所で、アイロはまだあの青いマフラーを手にしていた。


ミアは知らなかった。


アイロが、まだそれを手放していないことを。