君の瞳に輝きを

彼女の姿を学校で見なくなって一ヶ月がたった頃だった。
その日の放課後、初めて僕は自分から彼女に会いに行こうと思った。

久々に再会するにはふさわしくない雨の日で
その雨は、冷たくて寂しくて
まるで誰かの涙のようだった。

「星良ちゃん、卒業まで家庭の事情で来れないんだって」

僕は耳を疑った。

偶然、今日来てないだけ
そう思った

そう思いたかった

けれど、ポツンと佇む主がいなくなった冷たい机が
今聞こえたことは正しいと物語っていた。

「___ねえ聞いた?星良のやつ、結局このまま卒業まで来ないらしいよ」

「なんか、家庭の事情とか言ってたけど絶対嘘だよねー」

「それな!絶対あたし達の”善意の忠告(いじめ)”に耐えられなくなっただけでしょ」

「まあ、自業自得じゃん。夕翔(ゆうと)くんのことたぶらかして、真昼(まひる)のこと裏切ったし」

帰り道、廊下の隅にたむろしている女子たちの会話が容赦なく僕の鼓膜を突き刺す。
真昼。確か、星良が心友だと言っていた女の子だ。

彼女たちの甲高い笑い声がやけに頭に響いた。
嘲笑混じりに口にする言葉を拾い集めていくうちに、血の気が引いていくのがわかった。

教科書や体育着を隠され、机に落書きをされ、挙句の果てに、カッターナイフで切りつけられた――。

頭の中が真っ白になった。

気づいたときには自分の部屋にいた。
どうやって帰ってきたのか、今まで何を考えていたのか全く記憶がない。
けど、そんなのはどうでもよかった。

自分の心臓が、内側からバキバキと砕け散っていくような衝撃が襲う。

知らなかった。何も

彼女、いや星良のことを。

違う。

知らなかったんじゃない。

知ろうとしなかった。

僕のことを救ってくれた友人が、恩人が
クラスで孤立し、どれほど怖い思いをして、どれほど傷ついたのか。

今一人で、底なしの暗闇に突き落とされていたなんて。


「なんで……っ、なんで僕は、何も気づかなかったんだ……!」


喉の奥が燃えるように痛い。
血を吐き出すような悔しさが込み上げる。

いつだって助けられるのを待っているだけで、

彼女のことを何も知ろうとしなかった自分の甘さが、

吐き気がするほど憎かった。 

窓の外では、僕の涙の代わりに、冷たい雨が激しく世界を打ち付けている。

溢れる涙を拭うことなく
激しい後悔の中で強く誓った。

 ――もう二度と、自分の無力さに泣き寝入りなんかしない。
 ――君が僕のために戦ってくれたように、今度は僕が、君を守る強さを手に入れる。

傲慢かもしれない

自分勝手かもしれない

君はなんで今更って突き放すかもしれない

それでも

いつか必ず、君の奪われた瞳に、

あの美しい輝きを取り戻すんだ。 

待っていて、星良。 










今度は僕が、君の太陽になるから。