三浦主任の「ん」はずるい



「三浦主任。受理されてないからといって、セーフじゃないんだぞ」
「ん」
「申し訳ありませんじゃないのかな?」
「申し訳ありませんでした」

一字一句、通った声で返す。

「……これはこれで腹が立つな」

人事部長に呼び出された三浦。

「主任は紙で欲しいんだっけ? はい、始末書」

事務手続き遅延に対する改善報告をしなければならないが、三浦の表情は変わらない。その場で綴ってみせた。

「あっ! 沖縄と言えばシーサーだろう?」
「ん?」

部長は内容の確認もそこそこに押印する。

「もう君に見合いを勧めるのは止めた」
「……」
「S社との仕事、成果をあげるように。私の顔に泥を塗ってくれるなよ?」

奈緒の件は部長の力添えがあってこそ。

「はい、必ず。彼女がいないと困りますので」
「はは、よく分かってるじゃないか」

上機嫌になる部長へ一礼し、三浦は退室。
廊下の窓から青空が覗く。

「主任〜! 空港便が届きましたよお!」

ポケットからガムを取り出すと、噛み締めた。

おわり