後輩彼氏ドSすぎませんか!?

「先輩、無防備すぎだろ....俺だって男なんですけど」

「夢だからいいかな、こんな幸せな夢見た事ないから」

ギシーー

ベットの軋む音がする。

気づけば私の顔の近くに湊がいる。


....湊...近くでみるとカッコ良すぎ...
意地悪そうに細めた目も、ずるすぎじゃん。


「夢じゃないですよ先輩。そうやって俺だけにいつも甘えてくればいいのに」

夢じゃない....か。

ううん、違う。

これは夢だよ湊。

湊は私にそんな事言うはずないもん。

いつも意地悪ばかり言ってきて。

私が困ってる顔を見て馬鹿にしてくるくせに。

今日だって....

湊の好きな人は私じゃないでしょ.....

私は湊に視線を向けた。

湊の顔は苦しそうな顔をして私を見つめていた。

「そばにいてよ、湊」

私はまたそのまま目の前が真っ暗になった。

''キーンコーンカーンコーン''

私はチャイムの音で目が覚めた。

頭がまだぼんやりしてる。

んっ....うるさい...

...まだ少しきついなぁ。

ベッドから起きあがろうとすると私の左手に柔らかい何かが当たった。

視線を向けると、サラサラな髪に長いまつげ、スヤスヤと眠ってる湊がいた。

え!?湊!?なんでここにいるの!?

シャッとカーテンが開く音がした。

白衣を着た保健室の先生だった。

「あら、凛ちゃん起きてたのね」

「湊くん、放課後だから帰りなさい」

湊は体を起こして大きなあくびをした後に目をこする。

「湊くんったら、凛ちゃんから離れなかったのよ」
先生は、手を口元に当ててクスッと笑う。

離れなかったって....いつから居たの?

だって、私が覚えてる限りあれは夢の中.....

「先輩、まだ熱あるんですか?俺が送りますよ」

「あ、ありがとう」

私たちはカバンを片手に持って保健室から出た

さっきまで太陽に照らされてた廊下が
もうオレンジ色に変わっている。

私、そんなに寝てたんだ。

「ねぇ、湊、私なんか変な事言ってた...?」

「ん〜どうでしょうね」

どうでしょうねって、どういうこと?

「''そばにいてよ湊''なんて聞いてませんよ」

湊は私の顔を覗き込んで、また意地悪そうにニヤッと笑った。

今さっきまで居た生徒達の笑い声も走る音も聞こえない。

夕焼けに照らされた廊下が2人だけの空間みたいだった。

ーーーえ?

ちょっと待って、夢じゃないって事!?

その瞬間、私の頭の中でその時の光景が流れた。

湊の顔が近かったことも、唇の柔らかさも。

私が恥ずかしい事を言った事も。

私は夕焼けに照らされてるように顔が赤くなった。

熱のせいか、心臓のせいか
どっちかわからなかった。


「俺のタイプは先輩じゃないです」

胸に何かが刺さるようにズキッときた。

「わかってるよ」

「だから、忘れて、湊」

私は精一杯の作り笑いを湊に向けた。

静まりかえった廊下には私の走る音だけが鳴り響いた。

目の前が涙でぼやける。

体がだるいはずなのに、足を止める事ができなかった。

「先輩、待てよ!」

私の手首を湊が力一杯掴んだ。

「...痛い...離してよ。いまさっきのことは、忘れて」

泣いてる顔、見られたくない。

私は振り向く事ができなかった。

「そういう子供っぽい所がむかつく」

手首を掴まれたまま私は湊の胸にひきよせられた。
制服越しでもわかるくらい湊の胸がドキドキ聞こえる。

「人の話最後まで聞かないとかむかつくし、忘れろとか、むりだから」

「え....?」

湊の顔を見上げた。

「俺のタイプは先輩じゃないです」

胸がギュッと苦しくなった。

腰まで回された腕から抜け出そうとしても
湊は私を離さなかった。

「でも、好きな人は先輩です」

私は体が固まって動けなくなった。

さっきまでぼやけてた視界が一気に明るくなって、湊の表情がハッキリわかった。

少し悔しそうに私から視線を逸らした。

「私の事、またからかってるんじゃないの....?」

湊の視線が私に戻った。

「それなら、俺とーー」


湊の手が私の頬に触れる。


私の目を一直線に見つめていて真剣だった。


....こんな湊、初めて見た。


「付き合ってみます?」

その瞬間、私に強い風が吹いたみたいに息ができなくなった。

今にでも高く飛び跳ねるくらい嬉しかった。

絶対に無理だと思っていた恋、熱なんてどうでも良くなった。

私は視線を下に向けて、湊の胸の中で小さく頷いた。

その瞬間、湊がふっと笑った気がして
目線を向けた。

「.....やば。可愛すぎる。」

私はその言葉でまた湊の胸に顔を埋めて
動けなかった。

今まで意地悪だった湊のことも。

今まで隠していたこの気持ちも。

もう全て湊にこれから伝えていこうと思った。

私達はそれから2人で下校した。

「先輩、彼女になったんだから敬語じゃなくても良いよね。後、名前で呼ぶから」

「い、いやいきなり名前で呼ばれてもーー」

「凛、よろしくな」

いつものように意地悪な目をして、ニっと笑った。

私の心臓の音が、風の音を掻き消すかのように強くなった。

ちょっと.....いや、かなりドSすぎませんか!?



湊との分かれ道、少しだけ寂しくなった

私はそっと湊の制服の袖を掴む。

「明日は少し早く、迎えにきてよね」

湊の手が私の頭に軽く触れた。

「可愛すぎだろ、俺も会いたいから早くいくよ」

いつもより優しい声。

私の体があつすぎるのか、湊の手が冷たく感じた。

ピロン

その瞬間、スマホから通知音がした

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''凛、ごめんね〜熱は大丈夫?
仕事が終わりそうになくて.....会社に泊まらないと行けない事になったの。

隼人くんと佳奈ちゃんにもご飯は明日にしてもらえないかな?''
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お母さんからだった。

ちょっと、待って!私家の鍵持ってないんだけど!

え?家に帰れない....?

「凛、どうした?」

「お母さん、会社に泊まるんだって、でも家の鍵持ってないの」

「野宿でもする?」
湊は意地悪そうに笑った。

「玄関で....寝ようかな」

「ダメに決まってんだろ」

「熱がある彼女を玄関に寝かせるわけないだろ」

「俺の家に来る?俺も今日家族いないから」

ーーーーーえ!?

付き合って数時間で湊の家にお泊まり!?

「なに、焦ってんの」

「だって、付き合って数時間でお泊まりだよ!?緊張しないの?」

「いや、別に看病だけだから」

湊は少しタメ息をついた。

「そ、そうだよね!」

何考えてるの私。

咄嗟に変な事言っちゃったし....

熱のせいで頭が回らないのか恥ずかしい....

「凛」

湊が後ろから私の首元に腕を回してギュッとした。

「なに、変な事考えてんの」

「そんな事しねぇよ、大切に思ってるから」

湊は低い声で私を落ち着かせてくれた。

そうだよね。

いつもふざけてるように見えて
真面目な所あるもんね....

「....それなら....お邪魔します....」

お母さんになんて言おう。

彼氏の家にお泊まりするなんて言ったら怒られるかな....