出発の時間はそれからすぐだった。
乃々の母親が車を乗り付けた門の前で蒼空が言った。
「それじゃあね。」
蒼空が言った。
「乃々、バイバイ。」
「それじゃあ、お母さんによろしくね」
「蒼空くん。」
乃々は窓ガラスを開けて蒼空の手を掴んだ。
「大丈夫だよ」
蒼空が言った。
重ねたてのひらが離れて、車が出発した。
「蒼空くん!蒼空くん!」
乃々は泣き叫んだ。
「みっともないわね、家すぐ近くよ。」
運転をしながら母親が言った。
「蒼空くんが。」
「学区、お隣。見かけた事なかったら不思議よ。辞めなさいもう。」
母親は窓ガラスを閉めてしまった。
別荘モリノが遠くなっていく。
乃々は後ろの席で、泣きながら、バーベキューや、星空や、卓球台のロビーや2人で夜更かしした蒼空の居た部屋を思った。



