猛攻する犬系後輩に抗えない



休み時間に鏑木憂太(カブラギユウタ)を呼び出した。


作曲と作詞の完成度をまず話した。


「声に出して歌ってみないと分からないこと
一杯でてくるから楽器なしに作詞中心に歌ってみる練習も要ると思うな」


メモに走らせる左手。


左利きなんだ……トランペットを吹く時は右手だったけど両利きなのかなっ。


「なる。僕の左手みてましたよね?僕両利きなんですよ」



突然の名前呼びにサービス精神を感じる。



ここは二人だけの空間。



誰にも聞かれてないことを祈る──。



ドッドッドッドッと胸が高鳴る。



名前呼びされたからなんだ。慣れなくちゃいけない
年頃の女の子なのに──。


なる。という唇の動き、響きだけで本末転倒しそうである。


左利き──が両利きなんだっけ。


彼は読心術を使ったのか質問を投げ返される。


「そう……!左利きなんだぁ──って思ってて、

ゆ、うたくん?」



照れた様子にご満悦な様子の鏑木君。


「やっぱり名前呼びは、恥ずかしいなぁ──????
いきなりは応えるかなぁ──????」


と秒読み破談カップル宣言すると、


ムゥとほっぺを膨らまして抗議する鏑木君。


「僕気づいてますよ。慣れてないからって心の中では苗字呼びしてるなるのこと」



また読まれた。イエローカードが奮発している。


恋ができないって知られたら負け犬人生に思われるっ


階段を降り逃げようとすると──



「先輩?こっちきてください」


優しく名前呼びじゃなく、先輩というワードが胸に突き刺さって抜けない。


「ずるいよ、ゆ、うた君……」


涙ながら反発していると、背の高い憂太くんが頭を撫でてくれる。


「陽色ってなんですかね、僕の近くにそんな名前の友達が居て。なんで親は太陽の陽に色って名付けたんですかね?」


落ち着いてきた。単調な会話だったけど引き返すことはできたから恋愛レベル少し上がった。


涙を拭いながら



「親は太陽の陽に色って名前つけるだけでシンフォニーを感じたんじゃないかな」


管弦楽語が出てしまう始末。無理してるわけじゃないけど後輩の顔に泥を塗らないように言葉一つ一つ懇切丁寧に締めくくる。