このクラスでは、給食の時間は机同士を向かい合わせにくっつける。
そうすると、向かい合った前の人が食べるのを眺める事になる、もちろん話をしながら。
みんなが給食を全部食べ終わって雑談を始める頃になっても、食べるのが遅い乃々はまだ辛抱強く食事を続けていた。
その日の給食は、オニオンスープに、チキンとサラダ、それから蜜柑がひとつ。
やっとオレンジ色の蜜柑に手を伸ばした時、椅子が急に後ろへ斜めに傾いて、乃々は驚いて振り返った。
「乃々。」
そこに居たのは佐倉碧くん。
このお話のヒーロー、きれいな顔立ちにトレードマークのさらさらヘアを傾けて。
碧は乃々の椅子の背もたれに両手で体重を乗せて、真面目な顔で乃々を見下ろしている。
「蜜柑は後。良いもの見せてやる。来な。」
「なに?」
「良いから。」
食事を中断した乃々は碧の後についていった。



