あーあ。
せっかく旅行に行けるくらいには、青あざが引いたところだったのに。
また外に出られなくなっちゃう。
勘弁してよ。
「お前さ、ごめん、ごめんってさ……」
「え、なに……」
首根っこを掴まれ、無理やり視線を合わせられる。
フウ、フウ、と肩で息をする彼の目は、完全に血走っていた。
どうやら、今日は相当キてる。
ブチ切れの、大ブチ切れだ。
ガソリンがなくなる焦りが、旅行のストレスを何倍にも膨らませている。
「死ね――…!!!!」
叫びのような怒声。
ドゴン、と重たい音が響いた直後、私の視界は真っ暗になった。
車のフロントガラス目掛けて、頭を打ち付けられた。
ダッシュボードのスマホホルダーが、ポキリと首を折って壊れている。
折れたプラスチックの隙間に、赤いものがついていた。
ああ、これは結構まずいんじゃないか。
額に触れると、ぬと、と生暖かい液体が指に絡みつく。


