「ニオイのするモンはないと思う。元住人の物とか服だな」
「ここに人が住んでたんですか?」
そんなバカな。
「さっきまで喋ってたじゃねーか。1年くらい前だっけかな、ユキがここで住んでたの」
「ユキって、」
瑞生?
あのとんでもなくキレイな顔をした人が、こんなゴミ屋敷に住んでたの?
なるほど、神は全てを与えないらしい。
一切の無駄のない美人な男には、整理整頓の能力が著しく欠けてしまっているんだ。
「んでもよかったな!服とかも持ってないだろ?あそこらへん漁ってみろよ、着られる服たっくさんあるから」
「……なんで笑ってるんですか」
「片付け大変だと思うけど頑張って。ボランティアと思って住めばいい」
ケタケタと笑うホストに、つられて笑ってしまう。
たしかにここなら遠慮はいらないなと思った。
戻ろう、とフロアを目指しながら、目の前の背中に「ホストですか?」と尋ねてみた。
「そうだよ」の返事にやっぱりかと思うのと同時に、職業柄だろうが話しやすい彼の態度に心で感謝する。
