「だけど紫藤は受け取らなかった」
「足りねぇってか?」
「ううん。お金じゃなかった」
「店か?」
「いいや」
「じゃあなんだよ」
キイ、とカウンターチェアが回転する音がした。
気配で解った。
瑞生が私の方を向いている。
「ソレ」
カラン、と何処からともなく氷の溶ける音がした。
「な…ッ、お前」
がた、とテーブルが動く。
私から距離を取るように仰け反ったホスト。
テーブルの上の瓶とグラスが倒れないように、思わずそっと手で支えた。
「返しましょう!!」
さらに叫ぶような熊の声が後ろから飛んできたもんだから、誰に視線を合わせればいいのかわからない。
もうずっと肩身が狭い。
