ぎゅ、とブランケットを手繰り寄せて「あ、」と気が付いた。
車内で借りたブランケットを、そのまま持ってきてしまった。
すると走り出すと思った車の窓が開いて、紫藤 怜が顔を出す。
「そういやお前。名前なんてったっけ?」
「カナコです!」
窓枠から腕を放り出し、煙草を吹かす彼に前のめりになって答えた。
「カナコな、カナコ」
「あの、」
ブランケットを、いや、ありがとうの一言御礼を。
「まあ、この街でやり直すんだ。どっかでまた会うだろ」
それだけを言い残すと窓は閉じて、今度こそ車は走りだした。
また会える、か。
車のテールランプを見えないところまで見届けると、私も走り出す。
雪の道。
瑞生という男の足跡を辿って。
