「お金を貸してもらえませんか。絶対に返します」
「金持ってどうすんだ」
金持ってどうする。
家族にも、親戚にも頼れない。
こんなケガをした娘を見たら、きっと驚くし、悲しませる。
友達だって地元だし、彼との接点を少しだって持ちたくない。
私は、彼が怖い。
どこでも、どんな場所でもいい。
ほとぼりが冷めるまでは、誰も私を知らない場所で、そう……
「人生やり直します!!」
男は声を大きくした私に目を丸くしたかと思うと、片手で両目を覆って笑い出した。
……人生やり直すって、ちょっと大げさだったかな。
「わかった」
男は一言そう言うと私に背を向けて、車のスライドドアを開けた。
え、待って、どこ行くの?
「多夜、怪我だけ見てやれ」
「ああ」
” 怪我 だけ ”
私はもう一度車から捨てられてしまうかもしれない。
「まぁちょっと待ってろ。考える」
「いや、あの…そういうつもりじゃなくて、」
「俺もだ。まさか話を聞くだけのつもりが、余所者だったとはな」
さっきから何度か聞いた『余所者』という言葉。
男は私をなんだと思って車に乗せたんだろう。
呆ける私を尻目に、男はここを出て行った。
