余所者-よそもの-

後部座席の窓がゆっくりと下りて、顔を出して覗き込んでくる男。
こちらの事情にあまり興味がなさそうな、ぶっきらぼうな短い問いかけだった。


コクコク、とうなずく私に「そうか」と言って、視線を外す。
まるで見ちゃいけないものを見ちゃったみたいに窓枠に肘をおいて、ふう、とタバコの煙を吐き出している。


ああ、そうか。
そうだよね、おかしいよね。

絶対、どっからどう見てもワケありだもんね、私。


助けてほしい。
だから、説明しなきゃ。

えっと、えっと。
回らない頭に慌てる。
寒さで口が上手く動かなくて、焦りもする。


「――…ぁ…あなたは私を助けられますか?」


は?
って自分でもびっくりするくらい、とんでもなく下手くそな日本語が自分の口から飛び出した。

あ、違う、と思った時にはもう鼻で笑われてた。


「助けるには助けられるんだろうが、覚悟が要るな」


ですよね。
けして、怪しい者ではないんです。

って言いたいけど口が動かない。

寒さで体中が震えて、顔を上げることもできない。


「なあオイ。覚悟はあるんだろうな?」


頭上から振りかかったその問いかけ。
覚悟って、あなたにじゃなくて?

……私?


意味がわからなくて、ひたすらに頭を縦に振った。
なんでもいい、どうなってもいい。

助けてほしい。


ガラ、と車のスライドドアが開く音がした。
落とした視線の先に、雪をしっかりと踏みつける男の靴先が見えたかと思えば、そのまま抱き抱えられた。


「まぁ、話くらいなら聞いてやれないこともない」

そう言って、男は私を車に乗せた。