オレンジじゃない夕方







 昇降口に降りるまで敬は何も言わなかった。

 私達は鞄を持ったまま無言で靴を下ろした。

 
「私に意地悪して楽しんでるんでしょう。」


 私が言った。

 
「私が泣いたり怒ったりするのが面白いの?」
 
「秘密。」

「私が泣いたり怒ったりするのが面白いんだと良いな。それって私を好きってことだから。」


 敬は答えなかった。代わりに、


「涙の跡ついてる。原さん可哀想。」


 と言った。