オレンジじゃない夕方


 

 
 
 20分休み、私は図書室へ向かった。

 小説を買ってもすぐに読み終わってしまうので、私は普段から図書室を利用する。

 図書室の午後の陽が入る感じとか、空気とかが、私をリラックスさせる。


 

 図書室で小説を探していくと、私の後を追いかける様に、誰かが図書室へ入って来た。

 振り向くとそこに居たのは浅井くんで、私の方を見て、


「原サン」


とさんがカタカナに聞こえる様に呼んだ。



「どうかした?」

「どうもしない。けど。」


 書棚の前に立っている私に、浅井くんはこの間はありがと、と笑顔で言った。



「小説好きなの知ってた。原はいつも本読んでるよね」

「まあね」

「本以外で好きな事は?」

「好きな事ね……」


 私は考えてから答えた。


「特にはないかな」

「ふーん。」


 浅井くんが図書室を見回しながら呟いた。


「いつも見てる誰かが居るの知ってる。でもそれを見てる誰かも居るんだよね。」

 
 浅井くんは書棚に寄りかかった。
 
 端正な顔立ちでじっと見下されて、私はちょっと居心地が悪くなった。


「なに?」

「いや。なんでも。」


 浅井くんにこっと笑うと、書棚から背中を離した。


「また来る」