オレンジじゃない夕方






 
 昇降口から出た学校の帰り道、敬と私は二人で並んで歩いていた。
 無言の私を隣に敬も黙っている。
  アスファルトを踏みしめる二人の歩く音だけが、辺りに乾いて反響する。
 

 ────こういう時に、時間の儚さを感じる。
 

 時間は目の細かい砂の粒の様に柔らかく崩れて、後には憧れだけ残る。


「朝原さん見かけた時、細木と話してた。細木と仲良いね。」

  
 敬が続けた。

 
「つるむ人が居なかったから、無難にたまたま一人になってた奴とつるんだ。良い奴で割と気があった。」

「な、何。」
 
「女子の喧嘩巻き込まれたら止めてあげるよ。原さん可哀想だから。」
 
「もし巻き込まれたら可哀想なんでしょ。そんな馬鹿な真似しない。」
 
「可哀想、本ばっか読んで。もやしで。」


 敬が聞いた。


「友達を作らないの?」

「作らない」


 私が言った。

  
「誰かと関係を作りあげるのに向いていないから。」
 
「向いてるとか向いてないとか。そんなの関係ある?」


 敬が呆れ顔をした。


「もし原さんが求めれば、人との関係なんて簡単に手に入るよ。欲しくないんでしょ?。」


 私は黙って居た。
 

「孤独。原さんは。そんなんじゃ、誰かが君を好きになってもきっと届かない。」