オレンジじゃない夕方




 



 「敬、部活は?」

 
 放課後教室で敬と話しているときにそう聞くと、敬は事も無げに言った。

「出たり出なかったり。」


 戸を開ける音がしたので振り向くと、そこには隣のクラスのカップルが手を繋いで居た。


 
「なんか用事?」


 敬が声を掛けるとカップルの女子の方が言った。


「違うよ。」

「忘れ物?」

「違う。ウチら、ただウロウロしたいだけ」


 カップルの男子の方が笑いながらセーターに隠れた手で女子の肩を寄せた。


「みいくんと二人でデートするんでしゅもんねえ?」
 
「そのとーり」

「ウフフ」

「アハハ」

「ウフフ」


 ラブラブカップルは黒板の前をしばらくウロウロしてから、また教室から手を繋いで出ていった。



「せーしゅん。」


 敬が口を開いた。


  
「良いね。」
 
「幼児語みたいな言葉使っていちゃいちゃしたいと思わないけど。付き合うならもっと陶冶された状態で付き合いたいな。」


 私は考えてから言った。
 

「もし大好きだって思ったら人に言うかな。私だったら言わない。」

「何で?」


 目をパチクリした敬は、痛い所を突いてきた。
 

「それって言えないの?言わないの?」

「……言わないの。」
 
「原さん強情。伝わらないなら意味ないよ。僕なら言うな。」