オレンジじゃない夕方



 

 廊下を歩いていくと、無人の昇降口に夕陽が当たって、影になっている。
 こういう景色を見ると、大人になった時に、学生生活のこのシーンをいつかふいに思い出すんじゃないかと思われた。
 
 靴を出して入口から出る時、また呼び止められた。

 
「原さん。」


 遅れて歩いてきた敬は急がずに靴を出した。

  
「一緒に帰ろうよ。」


 ちょっと変な顔をしていたと思われる私が喋るのを聞いた。


  
「変だと思われない?」
 
「何が?」
 
「敬人気あって、私と歩いてて。」

「別に。言われた事ないよ。」

 

 敬が考えるように上を見た。
 続けて敬がこう言ったので、言われた私はぎょっとした。
 
「あ、付き合ってるんじゃない?、って言われた事ある。」
 
「……」
 
「気にする?原さん。」


 敬が振り返った。

 
「付き合ってないのに、ね。」

 
 カタン、と置かれた靴が、跳ねて変な形を取った。