オレンジじゃない夕方


 


 放課後。
 図書室の鍵を取りに職員室へ行くと、後ろから入れ違いに現れた理科の先生に呼び止められた。

 
「原」

「はい」

「この間の課題、中々要点を射てたぞ。原はいつも頑張ってるな。」


 先生に褒められるのは、私の特徴のひとつである。
 一生懸命、生真面目、頑張り屋。云々。


「ところでお願いなんだが」


 柔らかく作っているつもりの愛想笑いをしていると先生が切り出した。


「理科室の黒板、消してきてくれないか。先生今日消してないんだ。」


 私は図書室の鍵の代わりに理科室の鍵を持たされてしまった。



 理科室は一階の体育館側の一番隅にあった。
 影になった廊下を歩いている時、後ろから肩に手を伸ばされたのに気づかなかった。

 
「原さん」


 振り向くと敬が鞄を持って立っていた。


 
「どうして一言言わないの、鍵取りに行くって。」

「別に」

「おかげで僕は原さんを探したよ。」



 さっき、敬が教室の前の廊下で友達と喋っていた隙に、私は鍵を取りに教室を出たのだった。


「どこ行くの?」

「理科室」

「何しに?」

「黒板消しに」