朝、教室へ入ると窓際で冴が植物に水を遣っていた。
植木鉢の青い花は、教室の隅にいつも置いてある。
冴の気まぐれに感心しながら、見るともなく花をみる。
「そういやさ」
水色のジョウロを使いながら冴が口を開いた。
「真咲のいつもいく図書館、来週から夜まで開館だって。」
「ああ。冬は長いんだ。」
「良かったね。いつも行くんでしょ?」
「うん。帰りは図書館に居る時もあるよ。」
「そっか。だと思ってた。あ、あとさ」
冴は声を潜めた。
「前川くんの好きな人、判明したよ」
「……ふーん。誰?」
「なんか大学生の女らしいよ。帰り待ち合わせして帰るのを見た同級生が居るんだって。」
「へえ。」
「髪長くって、細くってきれいな人らしいよ。男ってやっぱ年上が好きなんだね。真咲はどうする?」
どうする、と急に聞かれて私は一瞬固まった。
「どうするって?」
「前川くん、諦める?」
「別に好きじゃないよ。」
「ちょっと年上すぎるから、家族かもって言う人居るけど、どうなんだろうね。前川くんって大人っぽいから。」
私がそう言うと、冴は相槌みたいに適当に頷いてから、花を窓際に戻した。


