オレンジじゃない夕方




 


 日曜から月曜まで在る中で、海外では水曜日が一番憂鬱だと言われているらしい。

 図書委員の初仕事は水曜日だった。

 職員室で鍵を借りて図書室に入ると、まだ誰も来ていなくて席はがら空きだった。
 図書室の一番前にある委員専用のカウンターに着くと、ガラガラと戸を開けて、敬が入って来た。

 
「原さん。僕が一番乗りかと思ってた。」


 敬はそう言うと、鞄をカウンターに置いた。

  
「雨降ってるね。さっきから。」


 敬が椅子を引きながら言った。

 続けて敬が小声で何か言ったので、聞き取れなかった私は顔を上げた。

 
「雨似合うね、って」


 敬が言った。
 はっきり発音する時の口の形。

 
「原さんて。」
 
「え?」
 
「安心する、小雨。」
 
「そう?」
 
「でも明るいか暗いかでいえば暗いんだろうね。原さん、あんま笑わないし。」


 敬が席について単語帳を開きながら言った。
 青い色の単語帳には、綺麗な字で英単語が書かれている。

 
「原さんが笑ったところ見たことある。」

「笑ってた?」

「うん。滅多に笑わないの?。笑えば良いのに。原さんてさ。」


 くすり、と敬が静かに笑うのを見た。


「臆病だね。」