オレンジじゃない夕方




 

「おんなじ委員会。よろしくね」

 
 ホームルームの後、帰り際、こっちを向いて敬が言った。

 私は自分の席で鞄のイルカのキーホルダーを直している所だった。 

 
「本好きなの?」

 
 私が聞いた。

  
「ぜんぜん。」


 敬は事も無げにあっさり答えた。
 それから笑って。

 
「好きじゃないよ。原さんは好きでしょう。」

「……」

「本の何が好き?」


 私は考えながら言った。

  

「読んでる時の無心で集中してる感じとか、読後感とか。読み終わった小説、私にとって、まとまった重さのあるイメージになるんだよね。」
 
「ふーん、本当に好きなんだね。」



 敬は頷くと、通学用の紺色の鞄を背負った。

 
「本を読んで感動したりする人と、僕は相容れないな。エモーショナルって良いことだと思う。それじゃ、さよなら」