丁度その日の夜、れねと慶太は花火をした。
次の日振られる事をれねが知っていたら、れねはその花火を何か特別な物と捉えたかもしれない。
アパートの庭、室外機と自転車が立てかけてある壁の横で、れねと慶太は花火をした。
パチパチと弾ける花火を手に、れねが言った。
「たーまや」
「それは打ち上げの時でしょ。」
冷静な声で慶太が言うと、新しい花火に火を付けた。
「綺麗だね」
「ね」
それから2人はしばらく黙って花火を見ていた。
「こういう時見ると、れねは別人みたいに見えるよ」
「そう?。どんな風?」
「いつもより綺麗に見えるし、知らない人みたいに見える。」
「そっか」
「知らない人だったら良かったのにね」
慶太は言いながら、花火を見ている。
伏せた睫毛だけ花火の明りに黒かった。
「なんで」
「知らない人だったら良かったよ。」
そうして何も答えない慶太に、れねは目を逸らしてため息をついた。
「そっかあ」
相槌の様な言葉を一言、宵闇に向かって吐いた。


