そのバーの帰り道。
駅から帰りしな、れねと慶太は夜の公園に居た。
「懐かしーい。高校生の頃夜によく来たなあ」
れねが言うと、さっきから黙りがちだった慶太が顔をあげた。
「それって藍田さんと来たの」
「うん、もちろん」
「へーえ」
慶太は眉を寄せてつまらなそうに俯いた。
「星が出てるね、とか話すんだよ。慶太も恋人が出来たらそうしなね」
「僕に恋人が出来たら」
慶太はしかめっ面で続けた。
「年上の女のひとと住んでた事があるって言う。アル中の頭からっぽの。大学生の彼氏持ちの。」
「妬かせたいの?」
「別に」
それから、慶太は、突然、手を上げてれねの頬をぴしゃっと軽く叩くと、それと同時に何か小声で呟いた。
「……」
れねは叩かれた頬を押さえて、怒り笑いで慶太の頭をぱちんと叩いた。
「何すんの」
「別に。痛かった?」
「痛かった。お返し。叩くと痛いでしょ」
「僕は痛くない」
そして、
「あーあ」
と夜空を見上げて慶太は忌々しげに呟いた。
「れね」
「なに」
「もし神様がいて、僕の考えてる事、全部ホントにしてくれたら、れね驚くよ」
「どんな事を考えてるの?」
慶太は答えなかった。
ただ難しい顔をして宙を睨んでいる。
「神様なんかいないけど」
と、れね。
「だよ」
「お姉さんは、本当、神様なんて居ないって思うなあ。」
れねが裕吾の事を考えていると、丁度良く、慶太がれねを睨んだ。
「藍田さんの事考えてたでしょ」
「あ、分かる?」
「うまく行ってないんだね。」
慶太はそう言うとため息をひとつついてから、
「それは良かった。」
と引きつった笑顔で笑った。
「酷い」
「酷いのはそっち」
「何が」
「別に」
「何が」
「……」
結局、慶太はその日機嫌が悪いままだった。


