私のかみさま(改)

―……



目の前に広がるのは、真っ黒な夜の海。


昼間はたくさんの人で賑わうこの場所も
今は静寂に包まれている。


真夜中の人っ子ひとりいない海岸に
響くのは、寄せては返す波の音と
私の荒い呼吸音だけ。



「はっ、はぁ……ごほっ」



全力で走ってきたせいで
息も絶え絶えの状態だったけど
そのまま、ためらわずに海に足を踏み入れた。


裸足のまま、飛び出してきたせいで
足はあちこち擦り傷だらけで、海水が染みる。



痛い。


冷たい。



だけど、もう引き返せない。



押し寄せる波は、ひざに、腰に、胸に
徐々に私の体を飲み込んでいく。



早くもっと奥に。



もっと深くに。




……今度こそ間違えない。




ちゃんと死ぬ。




そしたらきっと、あの人達は




幸せに、なれる。




昔のように、笑ってくれる。




「っ、げほ……っ」




口の中に、勢いよく海水が流れ込んでくる。




苦しい。



寒い。





もう、足もつかない。




とぷんと、全身が海に飲まれ、沈んでいく。




息が、できない。



視界が、真っ暗で何も見えない。



こぽこぽと、泡が弾けるような音だけが
かすかに聞こえる。



けど、その音も次第に遠ざかっていく。




「…」




もう何も、見えない。



聞こえない。



感じない。





……良かった。





…………これでやっと











やっと、終われる。