ミドサーですが、うっかり恋に堕ちまして

そして迎えた十五日。

連れて来られたのは海だった。

初めて二人で花火大会へ来た三浦海岸。

季節は巡り、師走の海風が自然と二人の距離を縮めてくれる。

「懐かしいね」

 私が言うと、遙も穏やかに頷いた。

「ですね」

しばらく二人で海を眺める。

寄せては返す波音だけが、静かに時間を刻んでいた。

あの日、元カレの緊急手術で約束が流れ、ようやく会えたと思ったら突然雨に降られて、

結局ホテルに泊まることになって……。

あの頃は、こんな未来が待っているなんて想像すらできなかった。

今年は本当に、いろいろなことがあったなとしみじみ思う。

「真夏さん」

「うん?」

 珍しく、遙の声が少しだけ緊張している気がする。

横を向くと、遙はゆっくりと片膝をつき、私を見上げていた。

「え……?」

 驚いて思考が止まる。

見開いた瞳の先には、小さなリングケース。それがゆっくりと開かれる。

「真夏さん」

「はい」

「あなたといると毎日が楽しいです。仕事でつらいことがあっても、顔を見るだけでホッとする。早く家に帰りたくて無駄な残業もしなくなりました」

 少し照れくさそうに笑ってから、続ける。

「これから先も、こんな平穏な日常を過ごしていきたいきたいんです。あなたと。だから……」

遥は深く息を吸って、愛おしむように私を見つめた。 

「真夏さん、俺と結婚してください。一緒に幸せになりましょう」

 胸がいっぱいになって、涙で視界が滲む。

「はい。私も遙と同じ気持ち。これからもずっと、一緒にいたい」

 私の言葉を聞いて、遙は心の底から安堵したように笑った。

「真夏さん、これからもよろしくお願いします」

 震える指先で、遙がそっと私の左手を取る。

薬指に指輪が滑る。

冬の陽射しを受けたダイヤモンドが、キラキラと輝く。

「うん、似合うよ」

「ありがとう。とてもステキな指輪」

「気に入ってくれた?」

「もちろん」

「よかった。ありがとう。俺……」

 少し照れくさそうに頭をかく。

「今まで生きてきた中で、一番緊張したかも」

「初めての手術よりも?」

「うん」

「そんなの嘘に決まってる」

「本当だよ、信じて」

 遙は立ち上がると、私を優しく抱き寄せる。私も背中に腕を回した。

耳元で波の音が響く。

「真夏さん」

「うん?」

「今日からは恋人じゃなくて、俺の婚約者だね」

その言葉が嬉しくて、私は少し背伸びをして遙に口づけた。

「よろしくね、遙」

「こちらこそ。一生、大切にします」