魔法少女ちゃんの秘密

 私 姫宮 凛、高校一年生!
 無事に第一志望の高校、夢色高校に入学してから数ヶ月経った今日は夏休み最終日!私はソファに寝転がってダラダラと漫画を読んでいた。

 夢色高校は主に服飾デザイン、パタンナー、ファッションビジネスの基礎を学べる、人気の高い高校だ。
 同じ県内とはいえ、電車をいくつか乗り継ぎしないといけないくらいに家から遠い学校。私がわざわざこの高校を選んだのには理由がある。それは…


 好きな服を作って着こなす為。


 もちろん、好きな服をわざわざ自作してまで着たいのには理由がある。それも、ものすごく大きな理由だ。

 しかし未だに服のデザインはイマイチだし、服の作り方も授業ではまだ習ってない。

 せっかく長い夏休みに入ったのだから、授業で習う前にちょっと自分でも勉強しよう!
 そう思って数週間。いつのまにか夏休み最終日になっていた。

 服の作り方の勉強するなんて目標をすっかり忘れて、私はダラダラと漫画を読み続ける。唯一の家族のお父さんも今日は用事があるとかで、一人の時間を楽しんでいるのだ。

 いや、正確には楽しんでいた。


 
 「彼は今日から君の兄になるから、仲良くしてね!」

 父親が帰ってきてそのまま連れ込んだのは、見覚えのある顔をした男性だ。彼は赤い首輪をつけた可愛らしい黒猫を抱っこしている。
 
 夢色高校の生徒に一番注目されてる三年生、五十嵐 湊。去年の勉強もファッションデザイン教科のほうでも、飛び抜けた成績を残したとか。その上スタイルも良く顔はものすごい整ってるため、全女子生徒から注目を浴びてる。
彼は今年生徒会長もやっていて、夏休みに入る前も集会で挨拶をしていたから学年の違う私も必然と顔を見ることができたのだが…

 (いや!まさか本当にそんな人が急に私の兄になるわけないし!?てかそもそも兄ができるってどういうこと!?!?)

 目の前に急に用意されたイケメンと、父の発言で混乱してる私をよそに彼は自己紹介を始める。
 
 (そもそも、もしかしたらそっくりさんってだけかもしれないし。うん、きっとそうだ。)

 「五十嵐 湊です。よろしく…」

 (終わったああああああ!!)

 入学してから一学期はごく普通に、目立たず浮かずに過ごしてたのに。最近学校一のモテ男の妹になりました、なんて絶対クラスで浮いちゃう…!

 いや、もしかしたら同姓同名の人かもしれない。うん、きっとそうだ。

 「今日からは五十嵐じゃなくて姫宮だろう?っていっても、急に苗字が変わるのは困るか。湊くんは凛と同じ高校らしいぞ?しかも湊くん生徒会長なんだってな!優秀な兄を持てて誇らしいな!」

 (終わったあああああああ!!!)

 うん、これは確定演出きちゃったよ。本人だよ。

 「私のキラキラスクールライフ終わった…」

 私は地面に倒れ込む。それを見て一歩後ずさる五十嵐さんに向かって、お父さんは私のことを紹介した。

 「この子が僕の娘の凛だよ、ちょっと変わってるけど仲良くしてあげてね!」

 「あ、はい。」

 反応に困ったように返事をする五十嵐さん。
 私はゆっくりと起き上がって自ら挨拶し直す。小さく会釈すると猫と目があった。

 (猫ちゃん可愛い…)

 「一年三組の姫宮 凛です、よろしくお願いします…」

 改めて五十嵐さんを見てみる。
 少し癖のある黒髪に、透き通るように綺麗な目。身長はお父さんより高くて…非の打ち所がない正真正銘のイケメンだ。黒猫を抱っこしているだけだというのに、とても絵になっている。

 それに比べて私は低身長。生まれつきの髪と目の色を隠したくて、ウィッグとカラコンを休日にまでつけてるような、おかしな高校生だ。父に似た顔は整ってる方だとは思うけど…目の前の五十嵐さんを見ると自信を無くしてしまいそうだ。

 「急に兄ができてちょっと驚いただろう?」

 お父さん、この驚きはちょっとどこれではありませんね。と心の中でツッコミを入れる。

 「実はお父さん、結婚するんだ!湊くんのお母さんと。」


 「…え?」


 その言葉を聞いて、頭の中が真っ白になった。





 「デビル発生。デビル発生。近隣住民は直ちに避難をしてください。繰り返します。デビル発生。デビル発生。」

 警告のブザーと共に聞こえる音声。

 首にかけている白いネックレスが光る。それを私は強く握りしめて、歩道を走った。

 「聞いてよリリィ、私お兄ちゃんができちゃった。」

 揺れるジャケットの隙間から出てきたのは、丸くて白い鳥さんだ。

 いや、正確には鳥の姿をした妖精さんが正しいか。

 「そうなんらァ、魔法少女プロフィールを更新しとくらァ。」

 「いや、愚痴ってるんだけど。もっと慰めの言葉とかないの?」

 私はネックレスに更に力を込めると、それに反応したようにネックレスは更に光った。

 「それよりも早く変身しないと危ないらァ?」

 「はいはい、わかってますよ。」

 少し走る速度を緩めると同時に、私はピンクの光に包まれた。
 ふわっとジャケットの中からリリィが出てきた感覚と一緒に、私の服装が変わる。その次に靴、ネイルまで丁寧に変わり、最後にはウィッグとカラコンとおさらばだ。勝手に髪型がツインテールに結ばれ、ネックレスがステッキの形に変わったら変身は完了だ。

 「魔法少女よ!」

 「魔法少女が来てくれたわ!!」

 「あの白い髪をした魔法少女、天使ちゃんじゃない!?」

 「本当だ!可愛い!!」

 (一応名前は天使ちゃんじゃなくて、ミルクなんだけどなぁ。)

 近くで騒いでる人たちをよそに、私は大きくジャンプ力が大幅に上がった体で電柱を登った。そのままジャンプして次の電柱に移動する、を繰り返した。

 「一番乗りなのらァ?この辺りは本当に魔法少女が少ないらァ。」

 私は横断歩道で小学生くらいの女の子を捕まえてるスライムのようなものに杖を向けた。
 黒くて、変な見た目をした生き物。それがデビル。今回はスライム型かぁ。

 (あのサイズのスライム型は簡単に倒せるから楽で良いんだよね〜。)

 「ヨイショッ!!」

 大きく杖を振ると、真っ白の光がスライムのようなものをチリジリにした。
 そもまま女の子の元へゆく。

 「大丈夫なのらァ?」

 さっきまで叫んで助けを求めていた女の子は、リリィと私を見ると顔を明るくした。

 「あのね、あのね!あたしね!魔法少女が来てくれるってわかってたから、泣かなかったの!!えらいでしょ!?」

 目に涙を溜めながらも、嬉しそうにはなす女の子がとてつもなく可愛らしく見える。

 「とっても偉いよ!怖かったのに頑張ったね!!」

 私が頭をなでなでしてあげた後、リリィが小さなブローチを女の子に渡した。

 「魔法少女・ミルクと出会えた証にもらうのらァ!」

 「わー!!やったー!ありがとう!天使ちゃんも助けてくれてありがとう!!」

 生まれつきの白い髪が、何故か変身してもそのままの色だったことからついたあだ名。それが天使ちゃん。
 
 (他の子は黒髪から水色とか、可愛い色になったりしてるのに…私だけそのままってひどいよぉ…)

 そもそも魔法少女だと分かりやすくするために変身時に変わる髪色は、元から目立つ髪色をした私には必要ないとからしいが…それでも人前でこの髪を見せるのがあまり好きじゃない私は、なんともいえない気持ちだ。
 その上変身した服は白色にピンクのフリルにリボンやアクセ。そりゃあこの格好は天使モチーフって言われてもおかしくないよな。

 「あ!ママ!!」

 女の子は迎えにきた母親の元へ走ってった。安心したのかギャン泣きをし始めて、母親は少し困ってる様子だ。

 (いいなぁ…)

 「天使ちゃんありがとう!!」

 私は女の子とその母親が見えなくなるまで手を振った。

 「さ、リリィ。帰ろう。」

 それから私はひとけのないところで変身を解いたら、おやつでも買いにとコンビニへ寄った。




 「あ、」

 「え、」

 同じ商品に手を伸ばして、ついつい当たってしまう。
 よくあることではないだろうか?漫画とかだと、気になる相手とかと手が当たって萌えるような展開。
 なお、私は違う意味で気になっている相手とでくわした。

 「えっと、五十嵐さん…?」

 “魔法少女!板チョコレート 神奈川編!!“
 
 私たちが手を伸ばしたのはランダムトレカ付きのチョコレート。しかもそのランダムトレカは魔法少女の…