水溜りの虹



休日マンションに呼ばれた。


先生は上着を脱いで棒みたいなのにひっかけた。


シャツにベスト状態になる。


「そんなまじまじとみられたらPS値測りたく


なるな」


"PS値"



何度も入院中聞かされた嫌な言葉だった。



全身状態を測るものーー。



「さぁディナーに移ろうか」


夕食は北京ダックに



和え物。



豪華な食卓で喉ごしのいいお酒。



先生はモテるから様になってみえる。



わたしも貧相にみえないよう


心がけないと……!



「あの、あの子は


死んじゃったりしてないですよね?」



「優秀な外科医だから惑わされるな。


手術は成功した」



ルンルンして聞いてたら


バイブ音。どこからだろう。



あ、先生から……。



席をたち仕事の返事をしているのだろう。


「折り返しーー」


携帯を閉じ、夕食にうつった。


「いいんでふか」


肉を頬張りながら質問する。


「後輩の報告ミスだよ。心配しなくていい。


フォローも伝言しといた」


「いかなくてもいいんでふか」


「あぁ。大丈夫だ。折角の料理が美味しく食べられない


だろう?ゆっくり味を噛み締めながらーー」



先生は仕事に忠実だった。


どれくらい忠実かというとプライベートと天秤にかけて


測りきれない。でも先生の指が震えたり声が震えてない



ってことは信用してもいいんだろう。



「PS値測るか?」


「もういいです!」


夜な夜な会話は楽しかった。