腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「だから教えてもらえませんか? お姉ちゃんのこともそうですが、尚史さんのことも。あまり自分のことを話してくれないんです」
「……そうね。栞さんは部外者でもないし」

 そういうと園子夫人は、ようやく落ち着いた表情になった。さすがにいつもの穏やかな顔にはならなかったが。

「警察が芳口病院に来ることは、珍しいことではないの。栞さんの事故について、病室まで聞きに来たでしょう? 周りの患者さんは驚いていたけど、外科医……といっても尚史くんだけど、傍にいた看護師も驚いていなかったと思うわ」
「……実は事故も入院も、警察のご厄介になることも初めてだったので、あまり覚えていないんです」
「ごめんなさい。普通はそうよね。夫も湊も医者だから、急患で呼び出されることがしょっちゅうだから。それでもね、弦くんが警察に連れて行かれた、と聞いた時は驚いたのよ。弦くんも外科医だから、医療ミスがあったのかと、思っていたら……」

 まさかの轢き逃げ犯。それも自宅ではなく、芳口病院で連行されたものだから、他の医者や看護師、事務員、患者など、その場にいた者たちは、園子夫人と同じように思ったらしい。

「それで急いで夫と一緒に警察署に行ったの。間違いであってほしい、と思って。私は第一発見者でしょう? 少しでも弦くんの力になりたくて……あっ、ごめんなさい。栞さんの気持ちを考えないようなことを言ってしまって」