腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 尚史さんからの話を聞いて、すぐにでも警察署に行って、弦さんに会いたかった。もしかしたら、姉の弱味を握れるかもしれない、という思惑と、尚史さんの重荷を少しでも軽くしてあげたかったからだ。

 けれど予定通りリハビリに行かなければ、左足の治りも遅くなる。今の私に必要なのは、自分の力で動けること。それが遠ざかってしまうのは、本末転倒だった。

 とはいえ、私にとって芳口病院は、あまりいい環境ではない。なぜなら……。

「まぁ、本当にリハビリに来たわよ」
「あのまま別の病院に行くのかと思ったのにねぇ~」
「でもほら、恋人のいる病院の方が、何かと融通が利くと思ったんじゃない?」
「そういうところは、姉妹そっくりね。もしかして、恋人を笠に、このリハ科も掻き回す気なんじゃないでしょうね」

 芳口病院で入院していた時に姉がバラまいた、噂が原因だった。違うとしたら、姉の評判も悪くなっているところだろうか。

 あの日、姉は確かこう言っていた。『だから今、湊さんが大変なことになっているんじゃない!』と。つまり、芳口病院を掻き回した、と思われているのかもしれない。