腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「弦さんは……今でもお姉ちゃんのことが好きなのかな」
「さぁな。だけどなんでだ?」
「だって、本気で湊さんのことも、寝返ったお姉ちゃんのことも恨んでいたのだとしたら、きっと容赦しなかったんじゃないのかなって思ったの」
「……会いに行ってみるか?」
「えっ」

 会うって、弦さんに? さっきまでは、私が芳口病院へ行くことを嫌がっていたのに、どういう風の吹き回し?

「場所が警察なら、一ノ瀬姉も下手に接触してこないだろう」
「あぁそういうこと。確かに、轢き逃げ犯に成り下がった男の元に、お姉ちゃんが会いに行くとは思わないし。仮に私が会いに行くかもしれない、と思っても、警察署で待ち伏せをすることはできないからね」
「それと同じ理由で、湊と共、鉢合わせることはないだろう。だが、面会には……俺は同行できない。今はまだ、捕まるわけにはいかないんだ。栞の足が治らなければ、ここにはいられない。そのチャンスを、一ノ瀬姉が見逃すとも思えないんだ」

 尚史さんの懸念も分かる。そして不安に思っていることも。だからこそ、逃げないでほしかった。