腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「そのせいもあってか、弦とは何度か鉢合わせになるんだ。本人は湊の粗探しのために現れるんだろうが、俺からすれば、現実を突きつけに来ているようなものだった」
「現実?」
「煽って来るんだよ。「また湊の尻拭いか?」とか「外では粋がっていても、結局、腰巾着と変わらなかったんだな」とか。俺に裏切らせたいのが、見え見えだったんだ」
「……湊さんの力を削りたいから?」
「それもあるが、自分のところに引き込みたかったんだろうな。もしくはスパイみたいに、情報を流してくれる、都合のいい奴がほしかったのか」

 芳口病院という大病院。その水面下で起こっている、次期院長の座を巡る闘い……どこかのドラマを見ているような感覚だった。あまりにも世界が違い過ぎて。
 逆に姉は、そんな未知の大きな席を勝ち取りに行こうとしていたのか、と思っただけで、急に身近に感じてしまうのだから不思議である。

「ともあれ、俺はその状況を利用したんだ。協力する振りをして、二人を同時に蹴落とそうとした」
「それが……私の事故」
「悪かったと思っている。下手をすれば栞は……」

 打ち所が悪ければ死んでいた。全身打撲と左足の骨折で済んだのは、むしろ運が良かったのかもしれない。
 背景に、そんな思惑があったと知っただけで、今更ながらゾッとしたからだ。