腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「それで何を聞きたい? いや、最初から説明するべきか……」

 私をソファーの上に座らせると、尚史さんは距離を置くように、横にある一人掛けソファーに腰を下ろした。

「最初って、湊さんの従兄弟を焚き付けた件?」
「いや、その前の……湊と一ノ瀬姉、(ゆずる)の件だ」
「……弦、さん。その人が、私を轢いた犯人、で合っている? 湊さんの従兄弟、なんだよね」
「そうだ」

 確か、姉と湊さんの従兄弟、弦さんがつき合っていた。だけど姉は湊さんに乗り換えた。尚史さんの話だと、湊さんが弦さんから姉を奪った、と言っていたけど、おそらくそれは違う。
 姉はもっと条件のいい湊さんに乗り換えただけだ。

 最初は姉も、芳口病院の時期院長である湊さんを落とせるとは思っていなかったのだろう。思っていたら、弦さんとは付き合わない。回りくどいことなどせずに、直接狙いに行くからだ。
 高望みはしない。夢を見ない。けれど今、自分にできる、最上級の選択をする。それが我が姉、一ノ瀬琴美なのだ。

 だから私を出来の悪い妹に仕立てても、なんとも思わない。そんな姉のことだから、捨てた弦さんに対して、何も未練はなかったのだろう。