腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 姉が帰ってから、再び穏やかな日常が訪れたように思えた。けれど病院からマンションに帰ってきた時ほど、ウキウキした気分にはなれない。

 それはまだ、尚史さんと交通事故について話し合っていないからだろう。姉がやって来た日に話したのは、今後のことであって、肝心な話はまだだった。

「明日のリハビリだが、休むか?」

 ほんの少し、ピリピリした空気をどうにかしようと考えていた時だった。尚史さんは帰って来るなり、私にそう尋ねてきた。

「どうして? まだ完治していないし、ここからリハビリに通う、という条件で退院の許可が下りたんでしょう?」

 今は仕事復帰をしていないから、できるだけのことはやっておきたかった。とはいえ、事故で折れた左足が、すぐにくっつくわけではないため、気休めでしかない。
 けれど何もしていない状態の私にとって、リハビリという名目で、マンションの外に出られる、絶好の機会なのだ。

 退院した直後は、同棲の準備で色々と外に出られたけれど、姉がやって来て以降、尚史は私が外出するのをよしとしなかった。まだ松葉杖が必要だから、ということを抜きにしても、である。