腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 尚史さんと姉の間で繰り広げられる、二人の男と一人の女の話。

 詰まる所、芳口病院の次期院長の座を巡って、まず姉が巻き込まれたらしい。
 院長の甥っ子さんより、湊さんの方が条件はいいから、すぐに乗り換えることくらい、妹の私でも理解できるけど……。

「元々、素行が悪かったが、湊との婚約話を聞いてさらに酷くなった。だから焚き付けてやったんだ……一ノ瀬の妹を襲えってな」
「え?」

 驚きと困惑が私の中で渦巻く。まだ知り合いでもなかった時期とはいえ、尚史さんが誰かに私を襲えって言ったことがショックだった。

 咄嗟に尚史さんの腕から逃れようと押すが、ビクともしない。それどころか、さらに強く抱きしめられた。

 私の体の震えを抑えたかったのだろう。けれど逆に姉の怒りに火をつけた。

「それで? 私だけじゃない、栞にも分かるように説明して! 何で栞を巻き込んだのよ!」

 尚史さんは答えない。多分、私に聞かせたくないのだろう。だけど……。