腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 尚史さんは案の定というべきか、すぐに駆け寄って来てくれた。

「なんで出てきた。この女から離れたいと言っていたじゃないか。嫌な思いをしてまで出てくる必要はない」
「尚史さん、それは違うよ。何を持ってきたのか知らないけれど、こうしてお姉ちゃんがやって来た以上、言わなきゃダメなの。なんで私が家を出たのか、察せられないんだから」

 こればかりは他人の言葉などは効かない。直接言って分かるのなら、そもそもここにも来るわけがないのだ。

 言わなければ、それは肯定と同じ。相手の行動を黙認することは、容認することと等しい。
 でもね、お姉ちゃん。私は散々言ってきたつもりだよ。

「いい加減、分かってよ。お姉ちゃんが大嫌いだってこと。これ以上、私の人生を目茶苦茶にしないで!」
「目茶苦茶ですって? それを言うならそこにいる岡先生よ。目を覚ましなさい、栞。アンタの事故は仕組まれていたの。そこにいる岡先生……いえ、岡尚史によって」
「えっ」

 思わず私の体を支えてくれている尚史さんを見上げた。しかし、こちらを向いてくれない。

「嘘、だよね」
「……悪かったと思っている」
「っ!」