腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

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「用が済んだら、さっさと帰ってくれ」

 玄関が開いて間もなく、尚史さんの苛立った声が聞こえてきた。やっぱり、と思った私は壁伝いに玄関へと向かう。
 尚史さんが家にいない間も、松葉杖を使わずに歩けるように、リハビリをした成果だった。

 ゆっくりと、私は気づかれないようにリビングの扉を開ける。

「それが届けに来た私に対する言葉?」
「はいはい。ご苦労さま。でもな、わざわざ持って来なくても、そのまま湊に頼んで病院のロッカーに置いてくれるだけで済む話だって分からないのか? 相変わらず回りくどいことをする女だな」
「なんですって! 妹の物を、姉である私が持って来ることのどこが回りくどいのよ!」

 物? 共同で使っていた物かな。
 でもここへ引っ越す時、もう戻らないつもりでいたから、今更持って来られても困る。

 だから二人の前に姿を見せた。

「栞!」

 すると、二人が同時に私の名前を呼ぶ。
 姉は特に、壁伝いに動く私の姿を見て、両手で口を塞いでいた。ここには尚史さんと私しかいないから、演技をする必要がないのに……もしかして、そんなに驚くような姿だったのかな。