腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「お姉ちゃん?」

 思わず顔を見ると、「実はそうなのよ」と可愛く照れた仕草をした。いやいや、二十四歳の女が両手で頬に触れても可愛くないから!

 そりゃ、芳口病院って言ったら、ここら辺では一番大きい病院だ。しかも評判が良く。「近くでいい病院はない?」と聞かれたら、誰もが一度は口にする名前だった。だから姉の就職が決まったと同時に、私たち姉妹はその近所に引っ越したのだ。

 六年前の五月。両親を相次いで失くした私と姉は、親戚の元へ行かなかった。残してくれたお金を頼りに、手に職をつけるためだといい、姉の琴美は看護学校へ。
 逆に二歳年下の私は、高校を退学して就職した。通い続けるだけのお金もないし、姉のような頭もなかったからだ。無駄に時間を浪費するよりも、仕事をしてお金を稼ぐ時間に費やした方が、何倍も効率的だと考えた。

 けれど中卒の月収など、(たか)が知れている。どんどん崩れていく貯金。職場で聞いた節約を実践し続けて、ようやく繋いでこれた感じだった。