腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「一応、報告書では知っていたつもりだったが、まさかこれほど酷かったとはな」
「えっ、本気で心配してくれているんですか?」
「おい、これでも俺は医者だぞ。そして栞の担当医」
「そ、そう、でした」

 なんだろう。寂しいような、嬉しいような。よく分からない感情で、胸がいっぱいになった。

「気落ちするのは分かる。相手は車を使っているし、発見も遅い。防犯カメラやドライブレコーダーを屈指しても、捕まえられるかどうか、は運次第だからな」
「はい。こればかりはどうしようもないことは分かっています。だから大丈夫です。ありがとうございます」

 どうやら私を励ましてくれているらしい。けれど、それも医者だから? と邪推してしまう。今は二人きりだから、恋人の振りをする必要はないからだろう。

「う~ん。やっぱり相手が警官だったからか?」
「何がですか?」
「素直すぎて気味が悪い。昨日みたいな軽口が言えないくらい、疲れているんじゃないか? いや、慣れない入院生活にも、か。一晩経ってみると、また違うからな」

 思わず、目を瞬きしてしまった。すると案の定、怪訝な顔を向けられる。