腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 岡先生は立ち上がり、私の耳元で囁いた。
 それがどのくらいだったかは覚えていない。私の事故は突発的で、岡先生に会ったのも、今日が初めてだというのに、その内容はとても緻密なものだった。

 まるで、ずっと計画していたような。そしてそれを実行できる相手を待っていたような。
 偶然か、必然か。

 私は岡先生の顔が離れていくまで、言葉を発せられなかった。

「どうだ。面白いだろう?」
「……一つだけ、難しい点があります」
「何だ?」

 これは分かっていて聞いているらしい。岡先生の顔がニヤついていた。

「……私たちが特別な関係でないと、成し遂げられない、と思います」
「特別な関係ね~。お互い子どもじゃないことくらい分かるだろう。言葉を濁さずに言ったらどうだ」

 どうしてそんな強気な、いや恥ずかしことを平気な顔で言うのだろう。だから私は、目を逸らしながら言うしかなかった。