新しい土地へ移住してから一年後。尚史さんは念願のクリニックを開業させた。
私たちは当初、離島への移住を視野に動いていた。けれど芳口病院の不穏な噂を聞いた尚史さんの恩師が、心配して連絡してくれたのだ。
その恩師は、都心部にほど近い場所にクリニックを構えている方だった。なんでも、地主のお嬢さんと結婚をしたため、開業できたんだそうだ。
けれどお年を召され、そろそろ引退を考えていた矢先、風の噂で芳口病院の現状を知り、尚史さんに声をかけてくれたのだ。
『下は妻の実家の土地でね。廃業にすると、地域の方々が困るし、見知らぬ者に貸すのもなぁ、と思っていたところなんだ。君さえよければ、ここでクリニックを開いてみないか? 中は古いが、道具は揃っている。看護師も残ってくれる者もいるだろう。どうかね?』
その恩師は元々芳口病院に勤務していたこともあり、尚史さんの引き抜きに対して、院長夫妻に口添えまでしてくれる、と提案までしてくれたのだ。
同じ世界に身を置いているため、尚史さんの場合は、完全に縁を切るのは難しかった。けれど恩師が後ろ盾になってくれたため、クリニックを開業しても、邪魔は入らない。
むしろ後釜に据えられたことで、問題なく手続きができた、というわけである。
縁を切ったのに、別の縁に助けられるなんて、なんだか不思議な気分だった。
私たちは当初、離島への移住を視野に動いていた。けれど芳口病院の不穏な噂を聞いた尚史さんの恩師が、心配して連絡してくれたのだ。
その恩師は、都心部にほど近い場所にクリニックを構えている方だった。なんでも、地主のお嬢さんと結婚をしたため、開業できたんだそうだ。
けれどお年を召され、そろそろ引退を考えていた矢先、風の噂で芳口病院の現状を知り、尚史さんに声をかけてくれたのだ。
『下は妻の実家の土地でね。廃業にすると、地域の方々が困るし、見知らぬ者に貸すのもなぁ、と思っていたところなんだ。君さえよければ、ここでクリニックを開いてみないか? 中は古いが、道具は揃っている。看護師も残ってくれる者もいるだろう。どうかね?』
その恩師は元々芳口病院に勤務していたこともあり、尚史さんの引き抜きに対して、院長夫妻に口添えまでしてくれる、と提案までしてくれたのだ。
同じ世界に身を置いているため、尚史さんの場合は、完全に縁を切るのは難しかった。けれど恩師が後ろ盾になってくれたため、クリニックを開業しても、邪魔は入らない。
むしろ後釜に据えられたことで、問題なく手続きができた、というわけである。
縁を切ったのに、別の縁に助けられるなんて、なんだか不思議な気分だった。



