腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「そうか? 湊と一ノ瀬姉は、互いに同意していない。結果的に、利用し合っていても、だ。でも俺たちは、互いの利益のために恋人同士になった。あの時は仮、だったけど。だから……その、経済的な面でも頼ってくれた方が、俺としてはいいというか、なんというか」
「……いいの?」
「そういう約束だろう? 二人で自由にならないかって。あいつらが、俺たちを利用したくない、と思わせるようにする。そのための手段なら、厭わない」

 当時を思い出させようとしたのか、尚史さんが私と同じ目線に合わせて中腰になった。野心的で、けれどその中にある熱を帯びた視線とぶつかり、胸が自然と跳ねる。

 そんなことをしなくても、忘れるはずがないのに。

「でも、比重が尚史さんにばかり傾いている気がするの」

 私は尚史さんの役に立っただろうか。

「どうかな。俺は栞を囮に使ったり、噂の的にしたりする、酷い男だぞ。比重というなら、栞の負担の方が大きい。特に体の、な」
「事故の怪我のこと? それは尚史さんが担当医だったんだから、相殺されていると思うけど」
「そっちの意味じゃない」
「え?」

 どういう意味なのか、尋ねようとした瞬間、尚史さんの唇が触れた。