腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「俺に近づいたのも、最初から湊が狙いだったんたろう? だが、その湊も今や——……」
「それは誤解です。ううん。丹羽先生は忘れているだけです。私に若先生を落とせ、と仰っていたではありませんか。丹羽先生の方が、それが目的で私に近づいたんでしょう? 言いがかりはやめてください」
「は? 何を言ってやがる。そんなこと、頼んでねぇよ。そもそも警察署での世話だって、勝手にやって……今度は何を企んでいやがる」
「企むだなんて……私はただ、院長や院長夫人、若先生の力になりたくて。それなのに、酷い!」

 両手を顔で覆い、後ろにいる湊さんの胸に飛び込んだ。

「捕まっている間の弦の世話は、琴美が率先してくれていたんだ。弦が僕の名前を出さなければ、父さんや母さんだって、面会に行けたのに。それを自ら潰しておいて、今度は琴美を悪者にする。弦の方こそ、何を企んでいるんだ」

 あら、意外に役に立ってくれるのね、湊さんは。だけどこれでもう、私は立派な被害者。あとは湊さんと弦が、勝手に自滅してくれるでしょう。ふふふっ。

 そう内心、ほくそ笑んでいると、遠くから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。その間も、湊さんと弦が会話をしているけれど、野次馬らしき話し声の中から僅かだが、確かに聞こえる。

 私は湊さんの胸に手をつきながら、待合室を見渡した。普段とは違う格好をしているけれど、間違いない。昔からよく見ていたんだもの。見間違えるはずはなかった。